Network Users' Group ``wheel'' / Dai ISHIJIMA's Page /
UNIX/X-Windowで使う「ぱうフォント」

最終更新日: 2004/01/31


UNIX/X-Windowで使う「ぱうフォント」


コンピュータを使って プログラミングをしたり文書を入力したりするときに、 その作業の快適さを左右する要因にはいろんなものがあります。 その要因としては、たとえば、 キーボードが打ちやすいかどうか、 マウスやトラックボールなどのポインティングデバイスは 思ったとおりに動かせるかどうか、 そしてディスプレイが見やすいかどうか、 といったものがあげられるでしょう。

キーボードに関しては、みなさんいろんなこだわりをお持ちのようで、 いろんなサイトで「こういうキーボードが打ちやすい」といったことを 書いたページを見受けます。 かくいうわたしも、キーボードには「やっぱりCTRLキーはAの横」といった こだわりがあります。 また、慣れない配列やキータッチのキーボードで作業をすると、 とても疲れます。

ディスプレイに関しても、 文字がくっきり表示できないものは目がつかれたりしますし、 その置き方 (目の高さとディスプレイの位置関係や、照明器具の映りこみの有無など) も作業の効率を左右します。

さて、以上のような入力デバイスや出力デバイスについては、 いろんなページでいろんな話題がとりあげられていますが、 わたしはもう一つ重要なポイントがあると思います。

それは文字表示に利用する文字フォントです。

文字フォントのデキが悪いと、 どんなによいディスプレイを使ってても目が疲れてきます。 逆に、フォントそのものが目に優しく読みやすいものであれば、 結果として作業がはかどるように思います。

最近は、X-Windowでもさまざまな日本語フォントが使えるようになりましたが、 しばらく前までは、日本語フォントといえば、14ドット、16ドット、24ドット の3種類ぐらいしかありませんでした。 ワークステーションやPCのXFree86を使い、1024×768ドットの画面サイズで kterm(1)を使って作業するには、 16ドットぐらいがほどよい大きさなのですが、 標準のフォントはいまいちわたしの好みではありませんでした。 というわけで、 「フォントはやっぱり国民機」 の記事のように、 PC(実際にはEPSONが昔作ってたPC-9801互換機)のフォントを X-Window用に変換して使っていました。 また、VGA液晶のノートパソコンで動かすXFree86のように、 画面の狭い場合には、 「恵梨沙フォント」 を使うといった工夫をしてました。 さらに、これらのフォント以外にも、 DOS/V用として公開されているさまざまなフリーのフォントを X-Window用にコンバートして使いました。

…と、ここまでは1998年ごろまでの話です。
えっ、前おき、長すぎですかぁ(^^;;;;

以上のような「フォント遍歴(笑)」の後、 非常に見やすいフォントに出会うことができました。 それが表題の 「ぱうフォント」 です。

この「ぱうフォント」は、丸ゴシック風の非常に読みやすいフォントです。 配布アーカイブに含まれるドキュメントには、 「ぱうフォントの目指すところは 『目に優しく文章を読める事』だと思っています。」とあります。 わたしも、このフォントはメールやいろんなドキュメントを読むのに 非常によくできたフォントだと思います。

このフォントは、元々は Hewlett Packard のPDAというか 手のりパソコンである HP200LX 向けとして作られたものです。 200LXは画面サイズが640×200ドット (CGA) であり、 どちらかといえば、 縦16ドットのフォントより11ドットのフォントを使うのが一般的です。 これは、一画面に12行しか表示できない16ドットフォントより、 18行表示できる11ドットフォントを使うほうが、 表示される情報量が多いからです。 しかし、「ぱうフォント」は、 この一度に表示できる情報量が少なくなってしまう、 というデメリットを補って余りあるその視認性の高さから 多くのファンを獲得しました。

このように目にやさしく見やすいフォントに出会うと、 自分が使っているすべての環境で利用したくなってしまうのは 当然ではないでしょうか? (ちょっとおおげさか ;^^

「ぱうフォント」のオリジナル版は、 「$fontx2形式」というDOS/Vや200LXで一般的な形式で配布されています。 また、最近では、「擬似TrueType」というWindows用のものもあります。 それ以外の形式のものもありますが、 UNIXやX-Windowで使うには、 $fontx2形式のオリジナル版を BDFあるいはPCFといった形式にコンバートする必要があります。

「$fontx2形式」のフォントをUNIXやX-Windowで利用するには、 拙作 「fontx2bdf」 などの変換ツールを使います。 「ぱうフォント」の配布アーカイブである「pawfont.lzh」が手元にある場合は、

	% lha x pawfont.lzh
で、まずアーカイブをバラします。 次に、DBCS(いわゆる全角)フォントファイルであるpaw16k.fntと SBCS(いわゆる半角)フォントファイルであるpaw16a.fntを それぞれ、
	% fontx2bdf < paw16k.fnt > paw16k.bdf
	% fontx2bdf < paw16a.fnt > paw16a.bdf
として、BDFファイルに変更します。 また、この段階で、必要に応じて変換後のBDFファイルを テキストエディタなどで編集しておきます。 たとえば、BDFファイルの先頭部のFONT行やFOUNDRY行を 適宜編集しておくといいでしょう。たとえば、
	FONT -Paw-Fixed-Medium-R-Normal--16-150-75-75-C-160-JISX0208.1983-0
	FOUNDRY "Paw"
のようにします。

次にbdftopcf(1)コマンドでPCFファイルに変換し、 環境によっては、さらに、compress(1)gzip(1)で圧縮します。 たとえば、

	% bdftopcf paw16k.bdf | compress > paw16k.pcf.Z
	% bdftopcf paw16a.bdf | compress > paw16a.pcf.Z
のようにします。

できあがったフォントファイルを使えるようにするには、 フォント用ディレクトリにフォントを置いてから 登録作業を行います。 フォント用ディレクトリに置くには

	# cp paw16[ak].pcf.Z /usr/X11R6/lib/X11/fonts/local
とします。登録作業には、mkfontdir(1)コマンドを使って
	# cd /usr/X11R6/lib/X11/fonts/local; mkfontdir .
とします。

そして、xset(1)コマンドを使って

	% xset fp rehash
とすれば、「ぱうフォント」がX-Windowで使えるようになります。 xfd(1)コマンドを使って
	% xfd -fn -paw-fixed-medium-r-normal--16-150-75-75-c-160-jisx0208.1983-0
とすれば、「ぱうフォント」が表示されます。

ここで「-fn」以降の「-paw-fixed-…」は、 X-Windowにおける「ぱうフォント」のいわば正式名称です (これはpaw16k.bdf中のFONTではじまる行に書かれています) 。 使うたんびにこんな長いフォント名を入力するのは面倒です。 そこで、短縮名をfonts.aliasに登録しておきましょう。 たとえば、

	paw16a -paw-fixed-medium-r-normal--16-150-75-75-c-80-jisx0201.1976-0
	paw16k -paw-fixed-medium-r-normal--16-150-75-75-c-160-jisx0208.1983-0
の2行を/usr/X11R6/lib/X11/fonts/local/fonts.aliasに 追加します。

ここまでの設定が終わると、「paw16k」といった短い名称で 「ぱうフォント」を利用できるようになります。 最後に念のため、もう一度xset fp rehashを実行してから、

	% kterm -fn paw16a -fr paw16a -fk paw16k
のようにして、kterm(1)を動かすと、 「ぱうフォント」でターミナルエミュレータが使えます。

また、「ぱうフォント」はX-Windowだけでなく、 日本語コンソールkonでも利用可能です。 この場合の使用例を 「Flash ATAにFreeBSD (IBM Palmtop PC 110 with FreeBSD)」 に書いてありますので、ご覧になってください。

なお、上記設定や実行例は、あくまでも「一例」であり、 みなさまがお使いの環境によっては、 フォントを置くディレクトリ名などを変更する必要があるかもしれません。 そのような場合は該当個所をみなさまの環境にあわせて読み替えてください。

関連リンク